当身のこと 目潰し編1

 八光流柔術における当身の使用頻度でトップ3と言えるのが、目潰し・手刀(てがたな)・一本指(主として拇指)の当身の三種です。
 肘当てや倒れた相手への蹴り当てもありますが、煩雑になるので基本三種についてのみ考察してみます。

 最初に目潰しについて。

 護身術講座などで、「まずは目潰しを練習しましょう!」と提案すると毎回「えぇ!?」と驚いて腰が引けてしまうひとが少なからずいます。そのようなひとは『目潰し』と聞くと指先で目を突く『目突き』の目潰しを連想してしまうそうです。
 目突きの目潰しは威力は絶大ですが、よほど熟練しませんと命中しませんし上手く当たったとしたら相手に失明の危険すらあるので、護身術としては過剰防衛の恐れがあり、かなり非情になれないと使えませんから、八光流柔術の基本としては用いません。
 八光流柔術の『目潰し』 とは五指をパラッとほどいた手でバチン!と目の周辺を狙って叩くものです。

 五指のうちのどの指でも眼球にヒットすればよいぐらいのアバウトさで放ちます。眼球に当たらずとも、目の周辺や鼻に当たればしばしの目くらまし効果も期待でるので、ぱっと咄嗟に放っても効果を発揮してくれる頼れる存在です。
 相手を失明させてしまうような威力を秘めていないので、ある意味安心してつかえる技とも言えると思います。

 目潰し単体で出会い頭やカウンター的に咄嗟に放つ際にはとくにフォームを気にする必要はありませんが、型に表れる目潰しについては少し気を配りたいものです。

 基本型で最初に目潰しが用いられるのは、初段坐技の腕押捕と胸押捕です。
 「掛(敵)が我の腕あるいは胸を掴み押さえつけて自由を封じ、空いた手で殴打せんと拳を振りかぶる刹那に」ぱっと目潰しを放ちます。
 
 この時の目潰しのフォームに特に決まりはないのですが、いくつかパターンはあります。
 私が師匠や諸先輩方から直接ならったことのあるフォームは以下のとおり。

A  顔の高さに手を引き上げてから、手を横に払うように手首のスナップを効かせて放つ。
A2 顔の高さに手を引き上げてから、手を縦に裏拳のようにスナップを効かせて放つ。
B  腿の上に置かれた状態から、そのまますりあげるようにスナップを効かせて放ち、手甲側で当てる。
B2 腿の上に置かれた状態から、そのまますりあげるようにスナップを効かせて放ち、当たる瞬間に手を返し掌を相手向きに指先で鼻をはねるように当てる。

 私が師匠に最初に習ったのはAのフォームですが、現在文武塾で推奨しているのはBのフォームです。
 ちなみに護身術講座で目潰しの手本としてBを何度も見せるのですが、みなさん自然といつのまにかA2のフォームになっているので、A2が一番簡単ということなのかもしれません。
 また、文武塾でも常にBのフォームを推奨ではなく、技/型によってAも使いわけています。

 A~B2まで、それぞれ狙う効果やメリットが少しずつ違います(口伝ですので記述は控えます)ので、どれが一番良いとか正しいとは言えません。ですが自分がしている行為の意味を理解し、その意図をしっかりもって行動することは稽古の密度にかかわります。一度ご自分の目潰しの見直しをしてみるのも楽しい作業ですのでオススメしたいです。

 どの目潰しをするにしても、大前提として毎回気を抜かずにしっかりと 「掛(敵)が我の腕あるいは胸を掴み押さえつけて自由を封じ、空いた手で殴打せんと拳を振りかぶる刹那に」目潰しを放つ習慣をつけることが大事だと思います。
 私自身、教伝していて腕押捕・胸押捕の崩しの部分の解説に熱が入ってしまうと、目潰しの当身がおろそかになってしまうこともあるので反省点としています。

 もう一方の注意事項は、しっかりと目潰しの当身を入れようと気が逸ってしまい、身体が前に突っ込んで前傾したり、強く当てようと肩を入れた姿勢になって半身にならないようにすることです。

 初段腕押捕・胸押捕の目潰しは相手をKOするための突き込みや打ち抜いたりする打撃技ではありません。
 目潰しに限らず、当身全般において他の技同様に良い(八光捕のできる)姿勢でもって力を棄てた腕による当身を用いるべきと思います。

 特に坐技はフットワークやポジショニングで逃げれない環境でもって「挑まず逆らわず傷つけず」に相手のアクションを受け入れる姿勢や心持ちを学び、習慣づける意味合いがあると考えています。
 ですので攻め気が勝って姿勢が崩れると、以後すべての動作・技において力ずくでやってしまう悪癖の原因になりかねないので、注意が必要です。

 だったら、姿勢の崩れる悪癖がつかないように目潰しの当身をしなければすむ話ではないか?という考えもあるかもしれません。
 ですが実際の護身の局面に備えれば、当身を省略することは攻防の定跡として得策ではないということを次回は考察してみたいと思います。

スポンサーサイト

テーマ:武道・武術 - ジャンル:スポーツ

| 柔術みちしるべ

«  | ホーム |  »