当身のこと 一本指の当身編

当身のことの最後に紹介するのは一本指による当身です。

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 一本指による当身には人差し指を用いるものや、人差し指と薬指で補強した中指を用いる当身などのバリエーションがありますが、八光流柔術で最も多様されるのは、写真に紹介しました拇指を用いた当身です。
 
この拇指の当身の手形は、八光流柔術の礼式でも用います。
この手形の作り方にも口伝があり、ほんのちょっとした違いですが、それをやるかやらないかで当身の効果も大きく異なります。
文武塾では、入門された方に入門初日の礼法の説明のときにこの口伝をさらっとお伝えしていましたので、聞き流してしまっていたひともいるかも知れません。忘れてしまったという場合、稽古の時に改めて質問してください。

拇指による一本指の当身の当て方を大雑把に分けると次のようになると思われます。

A すっと対象に向かって寄せ、当てた瞬間にぱっと引く指圧的な当身。
B 振り子のように腕の重みだけで加速し、当たったと同時に弾かれるように引く当身。
C 腕をまっすぐ突き出し、当たった瞬間からさらにぐっと刺し込むように突き入れる当身。

 三種類とも対象の中心点に対してできるだけ垂直に当てるのが好ましいところは、皇法指圧の手法に同じなのではないかと思います。

 一本指の当身をかなり強引に三種類に分類してみましたが、どれが正しいとかどれが一番優れているとかを言うためではありません。また目潰しの当身の紹介をした時のように「師範の個性によって違う」という性質のものでもないようです。

 つまり一本指の当身については、上記の三種類を使い分けています。

 それは「○○の技/型ではAの方法」のように決められているのではなく、ひとつの技でも時と場合によって使い分けているということです。

 現行の基本型で一本指の当身が初めて登場するのは初段坐技の『合気投』であり、次の一カ条の『膝固』でも続けて一本指の当身について学びます。
たとえば『合気投』では掛の転がり片は人それぞれ違いますし、また取の技が安定せずやるたびに投げ方が違ってしまえば、投げた後の取と掛(彼我)の距離は毎回変わってしまうことになります。
 『膝固』でも膝上の手を重ね手甲に刺激を入れられたときの掛の痛がり方と崩れ方も人それぞれ違いますし、そもそも取と掛の腕のリーチに差があればまた当て方も変えなければ効果を得られません。

 実は目潰しの当身や手刀の当身と違って、一本指の当身は、素振りによる一人稽古があまり有益にならない当身といえると思います。

 一本指の当身がその効果を発揮するためには、八光流の根本的な口伝「力めば全身急所となる」が大前提として成立している必要があります。それを無視して一本指で硬いものを強く叩くトレーニングや、素早く鋭く一本指を的に当てる練習をしても「労多して功少なし」なだけになります。

 型という対人稽古のなかで、いかに相手(掛)を「力めば全身急所」の状態にしてしまうのか、そしてその状態をどう維持し続け、自分(取)は姿勢を崩さず動きの連動の勢いを殺さず漏らさずにー本指の当身を入れるに、三種類のうちのどれを選択すればよいのか?を探る行為を繰り返ししていく必要があります。

そういう意味では、いつも同じ相手だけで稽古するより、反応も体格も違う色々なひとと稽古できる環境であれば、より早く相手の緊張を解かずに自分の身勢も漏らさない一本指の当身の当て方、時と場合の三種類の選択の仕方が身に付きやすいと思います。

 一本指の当身は当て方そのものより当てるまでの行程が大事であり、また当てる瞬間も彼我が構造的にも心理的にも「挑まず逆らわず傷つけず」関係性でいられるための学びになります。一本指の当身を効果的に入れるにはどうしたらよいのか?を考え悩むことは、投げ技や極め技の向上に必ず役に立ちます。
 
省略してしまうのはあまりにもったいないですから、当身まで気を抜かずに稽古しましょう。

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テーマ:武道・武術 - ジャンル:スポーツ

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