わかるとできる?2

 以前【単純力学を学べ】の回でも触れた実戦名人として名を馳せた故人の先生から言われたこと。

 この先生の技の解説というのは実にシンプルかつ明確であり、実際に目の前で次々とビシャッと技を効かせながら示してくださる指導でした。
 頭で理解させるだけでなく、容赦なく身体に効かせられることで全面降伏するように納得させられる教え方をされたので、本当に腑に落ちるといった感触を持てたのですが、いざ自分がそのようにやってみようとすると、非常にシンプルに感じたことがまったくできませんでした。

 思わず「あぁっ!なるほど! ……あれ? でも、できないです……」と弱音を口に出してしまったことがありますが、すかさず「馬鹿もん!! 儂は五十年以上やっているんだ。いま教えたそばからできたら、たまったもんじゃない!」とお叱りを受けました。

 このときどんなにシンプルで簡単そうに見えることでも、本当にできるようになるには時間がかかるものだということを学んだ気がします。

 今振りかえって考えると、この先生に限らず八光流の名人級の先生方は、一度指導をゆるした相手には惜しみなく自分の知りうるノウハウを伝えようとなさる方が多いため、名人の技を自分の身体で味わえたので、名人の技の感触というのはとても沢山積むことができました。しかし注意しなければならないと思うのは、「学ぶことは真似る(まねぶ)こと」という格言が正しいとしても、真似る対象は名人の技の感触や現象ではなくて、名人が積み上げて当たり前になって習慣化した部分だろうということです。

 よくよく注視してみれば、名人級の先生になると、やることなすこと自然でとらわれない動きをしていますが、姿勢のことや相手への触れ方などの基礎を雑にやっているということはありません。
 これは基礎のシンプルなことに注意を払わなくてすむぐらいに習慣化されているということだと思われます。

 安易に名人が小さな力で相手を崩したり投げたり封じたりという現象を解明して真似ようとするより、名人が当たり前にやっている基礎のレベルに近づこうと努力することが堅実な道だと感じています。

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テーマ:武道・武術 - ジャンル:スポーツ

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