引投について

 八光流柔術に入門して初めて学ぶ立技の投げ技は『引投(ひきなげ)』です。力を使わない技であるというインパクトを入門後にもっとも強く受ける技ともいえると思います。内容としてもごくシンプルな動作ながら奥が深く学びの楽しみも豊富です。また演武でも人気のある技という印象もあります。

 ただ、引投が面白いがゆえにはまってしまう落とし穴もあります。

 投げられまいと頑張って耐えている人を、なんとかして投げられるようにと工夫をこらしてみたり、
 より力を棄てた技をめざして感覚的なものを重視して棒立ちになってしまったり、
 よりキレがあり激しく投げる方法を模索してみたり、

 これらは結局のところ引投という技にとらわれた着想となり、攻防の手段としての柔術からは離れていってしまう恐れがあります。正直に白状すると私自身、師範許可取得以前にこれらの落とし穴にはまってしまい、大きく時間をロスした反省から引投の指導については気を使うようになりました。

 また本当の引投の上達を目指すならば、引投ばかり集中して長期間練習するよりも、一般技(およそ六十五カ条)と欲を言えば準師範技(およそ十六カ条)までを偏りなくできるように練習時間を割いたほうが、結局は引投のレベルアップにつながることがわかってきました。

 八光流柔術はとても良く纏められた上達のカリキュラムになっていますので、すべての技がその根源を同一にして、そしてすべての技同士が内容を補完しあっています。術理が異なる孤立した技はありません。それが八光流の『速習速成』を可能にしているといっても間違いではないと思います。

 たとえば押え極めの初段腕押捕や胸押捕は引投とはまったく違うことをしているようですが、技が効く条件の整え方(術理)ではまったく同じことをしています。一般技トータルで様々な想定でも同じく確実に術理を実行可能になれてこそ、ようやく想定外のことにも咄嗟に対応する場合でも八光流が活用できるようになります。
 ひとつの技だけの名手になれたとしても、護身の面ではあまり意味がありませんし、例え引投は上手くできるとしても、他の技に苦手なものがいくつもあるとすれば、本当の意味で術理を修得したとは言い難いです。

 それほど基本型の一般技およそ六十五カ条には取りこぼしできない内容がつまっていますので、焦らずゆっくりでも構わないので、丁寧に楽しんで余さずに学びとってほしいと思います。

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テーマ:武道・武術 - ジャンル:スポーツ

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