【柔術みちしるべ ~ゆがみと痛み2~】

【ゆがみと痛み2】

 初めて参加した本部での錬士会は、私にとっては皆傳技教伝と皆傳位取得の機会でもありました。

 以前、師範教伝のときに頑張りすぎて両手首がイカレてしまったという話を書きましたが、この皆傳技教伝のときも初めての錬士会ということもあって気張りすぎて、また両手首がイカレてしまいました。

 とくに左手首がひどくて、最終日の稽古が終わったあとにはトイレのドアノブを無意識に左手で回そうとして声にならない悲鳴をあげてしまうほどに悪化していました。

 このときの錬士会では関西から師範教伝を受けにこられていた方がお二人いて、最終日には師範許可式も開催されました。

 師範許可式のあとは恒例の宴会があります。

 宴会も終宴しておおかたの方が帰られたあとも、10名程度の本部に近しいメンバーだけでの宴会延長戦に突入したので、私も参加させていただいていたのですが、

 楽しい宴会と延長戦で興ののった宗家がふと、

「浅間くん!  ちょっとこっちに来なさい。」

と満面の笑みで私を呼ぶのです。

 そして、さあ掴みなさいと言わんばかりに、座ったまま満面の笑みで右手をさしだしてくるのです。

 ……戦慄が走りました。

 だってトイレのドアノブが回せないほどに痛めてしまった左手で掴むしかないのですから!

「いや、ちょっと左手首は痛いので反対でお願いします」

とは言えるはずもなく、そして貴重な機会ですから逃げの一手のような、うやむやの掴み方をしたら絶対にダメだ!と直感したので、

(えぇい!  南無三!!)

 いまだに人生で「南無三!」なんて頭に浮かんだことはこれっきりですが、捨て身のつもりでおもいっきり掴み、全身で押えようとしました。

 ぱっ しーーん!!!

 左腕からなにかが割れたか!? という音がしたかと思ったとたん、とんでもない激痛とともに全身を浮かされ、顔面から落されそうになるのを無我夢中で受身をとりました。

 普段は見せない、ちょっとスペシャルな技でした。

(あぁ……  やっちまった………)

 手首が折れたときは、つかの間まったく感覚がなくなって痛いとは思わないという話を、手首を折ったことがある父から聞いたことがあったので、投げられた直後、あれだけ痛かった左手首にまったく感覚がなくなったので(折れた!!)と思いました。

 そして右手で左手首の下を支えて、おそるおそる動かしてみようとしました。

 くるくるくるくる~~~

 あれ?  動く?!  全然痛くない!!?

 左手首周辺に火照った感じは残っていたのですが、先ほどまでの痛みがまったく無くなっていましたし、その後も痛みがぶり返すことはありませんでした。

 『八光流の痛みは治す痛み』『柔術の技は接骨や整体と同じ効果がある』とは言葉では知っていましたが、本音を言うとこのときまで半信半疑でした。

 あの話は本当だった!! という感動があって、このときのことはいまだによく憶えています。

 誤解の無いよう念は押しますが、そもそも痛めるような過度な稽古はのぞましくありません。技量の卓抜したひとの技ならこのような逆に治してしまうような効果があるということです。

 このようなレベルを目指すよう努力するとともに、怪我や事故がないよう常に注意を払って稽古することが第一です。

 痛めないように予防するために必要なことは、力を棄てた『挑まず、逆らわず、傷つけず』の技を追及していくことなので、結局はいつもの結論に落ち着いてしまいますね。

スポンサーサイト

テーマ:武道・武術 - ジャンル:スポーツ

| 柔術みちしるべ

«  | ホーム |  »