【柔術みちしるべ ~自縄自縛の技1~】

【自縄自縛の技1】

 八光流柔術初代宗家は「八光流の技は、暴行せんとする相手自らの暴力によって自縄自縛にしてしまう」という主旨のことをおっしゃっていたそうです。

 実際、現在でも名人級の師範にはこのような技を体現なさる先生方もおられますし、最奥秘の直伝ではその原理についても学びます。ただそれは学んだだけでは活用しがたいもので、基本技型で習慣づけた基礎を最奥秘の原理で精査しなおしてさらに磨きをかけ続ける必要のあることなのだと感じています。

 実は最奥秘の術理も、その原始的構造は入門当初から学ぶ一般技の型にしっかりと組み込まれていることを見て取ることができます。
 それを体感して理解するためには、やはり型稽古において掛が「正しく攻め掛かる」ことが必要不可欠になります。

 今回は、傍目から見ても自縄自縛状態にあることがわかりやすい一例として、旧版初段技教本から『第二か条 当て身のこと』を私の解釈を加えて少しご紹介したいと思います。

『第二か条 当て身のこと(旧型)』
1. 掛は取の両手首をしっかりと掴み攻める意思はやめないこと。
取は力を棄て、手を八光にひらくと掛の手の内を介して掛の攻めてくる力の出所がわかるようになる(当たりを捉える)。
2. 取は当たりを捉えられたら、両手同時に八光攻と同じ要領で掛の顔に八光にひらいた手の指先から腕を伸張させて突き込む(姿勢に注目。押し込んでいないことに注意)。
掛は自分の力がはね返ってきたためにのけぞってしまう。姿勢を保とうと腹筋や背筋まで無意識に緊張収縮していまい自縄自縛状態になっている。
3. 取は止まらずに両手同時に八光捕のようにひらいた手を耳横に半円を描くように寄せてくると、硬直した掛が吊り上げられるように自分にむかって倒れるように突っ込んでくるので、
4. 片手を半円を延長する軌道で解いて下から鳩尾にむけて拇指による一本指の当身を入れる。
5. 一般的には当身は相手の虚を突き力の入っていないところを狙うイメージがあるが、むしろ力が入っている実の部位を当てるのが『力めば全身急所』の口伝を活かした八光流独特の当身であり、怪我をさせずに「即座に爽快なる気分に転換」させる痛みをねらった拇指当身の特徴が見てとれる型でもある。
6. *拇指当身が不十分な場合に、即座に当身した手で同側の掛の前腕を掴み、曲池のツボを拇指で指圧し投げてしまう変化もある。
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 この旧版本の旧型『当て身のこと』は現行の型のカリキュラムには含まれていませんが、しっかり攻め掛かられた状態からなら自縄自縛状態がどういった感じなのか取・掛ともに体感しやすい型ですし、他の型をしっかり稽古していればさほど難しく感じることもないので、ためしてみるのも面白いと思います。
 ただし、思い切り吊り上げすぎると掛の身体が覆い被さるように勢いよく突っ込んでくるので、双方怪我の無いように注意してください。

 そういった怪我の恐れがあるためか現行型では『当て身のこと』は稽古されていませんが、では『当て身のこと』で学んでいることを現行のカリュキュラムでは学んでいないかと言えば、もちろんそんなはずがありません。

 この『当て身のこと』が収められている旧版本で一緒に紹介されている旧型の『膝固(ひざがため)』は現行型とかなりおもむきが違うものになっていました。
 実は現行型の『膝固』は、旧型『当て身のこと』と旧型『膝固』で学ぶ内容が集約された構造になっています。

 現行型『膝固』といえば、かなり地味なわりにけっこう痛くて想定的にも実戦的と思われないためか、省略されたり軽視されがちな型なのですが、もともと二本分の内容がつまった型なので心して稽古にのぞんでほしいと思います(手の甲へのダメージも大きいので数をこなすのが難しいですから、数回を集中して練習しましょう)。

 旧型『膝固』は原始的な構造を学ぶには適していますが、現行型『膝固』のほうが原始的な術理から最奥秘の術理までの課題を、稽古者のレベルに応じて同じ型でまかなえるという点でふところの広い型だと感じます。

 現行型で自縄自縛の技を学ぶ手始めとしては『膝固』から入るのが堅実といえるでしょう。そして上達にしたがって、自縄自縛の技が八光流柔術全体の技の構成と術理のなかでも大きな比重と役割をになっていることが体感として理解できてきますと、地味な型でもおろそかにできないどころか、八光流柔術の型のカリュキュラムには無駄なことがまったく無いことがわかってきます。
 そうやって気づきや発見をひとつずつ学びとっていくことも、モチベーションの維持や、向上心の支えになり稽古の面白みも増すことと思います。

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テーマ:武道・武術 - ジャンル:スポーツ

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