【柔術みちしるべ ~後逆首〆捕のこと3~】

【後逆首〆捕のこと3】

*注 掲載写真の型や形には行き届かないところがあり、正伝の技とは異なる点も多々ありますので見本となるものではありません。
 また師伝によって技の形・解釈にも差異があり、あくまでも文武塾式のものであることとご理解ください。

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 再掲写真8~12。私が師匠から学んだ後逆首〆捕にはこの行程はありませんでした。また師匠と同じく、この『引き廻しての持廻』の行程を入れずに、純粋に『持廻』だけで相手をコントロールしてしまう方法を指導される古い先生方もおられることから察するに、この行程は本来では立技でおこなっていた『引き廻しての持廻』が半立技にも導入されたものなのかもしれません。

 もちろんただの混入なのではなくて、立技でおこなう『引き廻しての持廻』と半立技でもちいる『引き廻しての持廻』には差異があり、半立技で練習するに値する理由やメリットがあります。

 まずメリットのひとつは「簡便になる」ということ。

 最初から掛ががっつりと首締めと腕のへし折りで攻めてきてくれていると、再掲写真6までの雅勲でもうすでに力みで掛の腕が急所化して硬直してくれているので純粋な持廻だけでも相手をコントロールすることも比較的容易なのですが、首締めとへし折りを手抜いてなんとな~く攻めてきているフリをしているような相手だと、雅勲の痛みだけで戦意消失してしまって抵抗せずに逃げて離れようとするので、純粋な持廻だけでコントロールするとなると相当な熟練度が必要になってしまいます。

 そのフニャフニャと歩いて逃げようとする相手に対しても、逃さずに追撃して仕留める手筋の前段が再掲写真の8~10です。

 片足を起こして踏み出しつつ、掛の顔面にむかって手背で当身を入れるぐらいのつもりで腕~手首をしならせて振り打ちます。
 実際には相手の手を雅勲の手之内でもったまま振るので、顔に当たることはまずありません。
 それでも当身とおなじ心持ちで振るのが大事で、亡くなられた実戦名人の先生などは引き廻しての持廻におけるこの当身を「○○か○○に○○を突っ込むぐらいの気持ちで打て!」と指導されておられました。

 するとどうなるか?というと、再掲写真10のように掛は大きくのけ反ってしまいます。

 その理由の半分は眼前に迫ってくるものを避けようとする掛の反射作用ですが、もう半分は掛の手を雅勲の手之内のまま持って振ることで、振る作用が掛の腕越しに鎖骨~脊柱群に働きかけることにより、のけ反りを誘発させています。

 その誘発の崩しを導き出すには、掛の手をもつ手之内をソフトタッチ(当たりを捉えている状態)にキープする必要があります。
 この手之内のソフトタッチをキープするという重要な術理ついては、初段技の学習の頃からすべての技において耳にタコができるくらい注意されてきたことと、実質はまったく同じ内容です。

 これ以前の突きあげ雅勲において正しく刃を起てずに、握力による脈の締めつけなどによって痛みをあたえることで誤魔化していると、掛の手をギュッと握ってしまっているために当身の振りが「ど素人の裏拳打ち」のような雑なクランク運動になり、のけ反りの崩しを誘発することはありません。

 大きくのけ反らせてから、伸ばした人差し指でひらがなの『し』の字を書くよう(写真は左手なので『鏡文字の“し”』)に当身で伸張させた腕を返すと(再掲写真10~12)、自分の腕に掛の身体を巻きつけるようにすることができます。
 この状態については先輩師範方に「相手を畳む」とか「相手をまとめて荷物にしてしまう」という言葉で指導された想い出があります。
 自分の腕に巻きつけることで、コントロールが容易になります。接触面積が広くなるほどコントロールしやすくなるのは、他のほぼすべての技について当てはまります。
 後逆首〆捕において、掛が腕のへし折り重視に組んでくるより、首締めをメインにがつりと組み付いてきてくれて接触面積が広い方が、初段立技の後攻落とおなじ要領で当たりを捉えることができて容易だったことと同じ理屈です。

 そして当身の振りからの巻きつけの「のけ反らせてから、前に突っ込ませる」という行程が、攻めてきているフリの相手であろうとも逃さずに追撃して仕留める手筋の後段でありまして、【自縄自縛の技1】でご紹介した『旧型 当て身のこと』と基本構造的にはおなじであることにお気づきいただけますでしょうか?

 これにて逃げる相手にも初歩的(原始的)な自縄自縛の技が成立しましたので、掛の重心が奪えました。
 重心が奪えたところで、ようやく次回『引き廻しての持廻』の行程に入ります。

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テーマ:武道・武術 - ジャンル:スポーツ

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